○モノクローム 乾ルカ
ネタバレ有ります
児童養護施設で育った主人公の沖田慶吾。母に捨てられた記憶から、他者に壁を作り、周囲を”卑屈”に見がち。母を恨みながらも、母との数少ない繋がりである”囲碁”から離れられないでいる。
18歳になり施設をでて、社会にでた慶吾。高校の後輩、香田との交流によって、向き合ってこなかった過去、そして母親と囲碁を通して向き合うのであった。
ストーリーは全体的に鬱々している感じ。主人公は母親、ひいては自分自身に向き合えないでいる。向き合わなくて良い。それが大人だと、僕はひとりになりたいんだと、”ひとりでも生きていける大人に一日でも早くなること”が、母親に対する復讐だと嘯く。でも本当は向き合いたいと思っているし、他者を求めている反面、傷つきたくなくて、逃げてばかり。だから、そんなに嫌いな母親の打ち込む囲碁から離れられない。アマ3段の壁を越えられない。他者との間に自ら壁を作っては”越えてきてくれるだろうか”と膝を抱える。
香田君がとても良いキャラ。敬語が苦手で、自分勝手、コーラ大好き。1年後輩だけど、その壁なんて無かったように接してくれる。
慶吾くんが時にまぶしく香田君を見ていた気持ちが分かりますな。
真面目だけど鬱々してる慶吾くんと明るくて人を惹き付ける香田くんという対照的なふたり。
読んでて思うんだが二人の関係が近くないかね。仲のいい友人ってこんなんなんかね。親友を持てたことは慶吾くんにとって喜ばしいことだけど、香田くんがいないと、心身ともに壊れかけるってのは、この先大丈夫なんかね。(なんか昔読んだ、シリアス系アキヒカみたいだ・・・・・・・・・(←腐(°Д°)))
依存先ってか、心の軸?みたいなものを”母(を振り向かせたい)”から”香田くん”に変えただけでは。
心配だな(笑)
慶吾くん母。未婚の母。北海道女流アマ王者。プロを目指していた実力者。望まない妊娠だったということなのか、5歳の慶吾くんをほっぽらかして、27歳の3月、大会出場のため菓子パンを置いて家を空ける。3日で帰ってくる約束が、4日になり、空腹に耐えかね慶吾くんは家からでてしまい・・。
結局、母も子どもなんだよな。
ラスト、”じぶんは、意味なく置かれた石じゃなかった。”って慶吾くんほっとしました。めでたし。
って終わるけど、ホントにそれでええんかいな・・・。
とひねくれた私は思ってしまう。
囲碁小説としても、なんか惜しい。
対局シーン頑張って書かれてたけど
囲碁好きな私としては、もっと囲碁楽しそうに打って欲しかったなぁ。